日常の様々なシーンでデジタル化が進んでいる今、DX推進は事業の存続・成長に必要不可欠なものとなっています。しかし、ビジネスの変革は一朝一夕とはいかず、何から着手すべきか戸惑う企業も多いでしょう。本記事ではDXを推進する上での課題を踏まえ、進め方のポイントを具体的に解説していきます。
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DX推進ガイド|ビジネスを進化させる
DX推進の課題と打開のヒント
まずは、DX推進の障壁となっている課題について見ていきましょう。
課題1:経営戦略としての位置づけが不明瞭
DXはデジタル技術を活用して事業や組織を変革し、生産性・競争力を向上させる取り組みであり、本来、経営層のコミットメントなくして推進することはできません。
電通デジタルが行った「日本における企業のデジタルトランスフォーメーション調査(2019年度)」によると、DXの成果を創出している企業の9割以上は経営層がコミットメントして推進しているという結果でした。また、DX戦略を経営計画に落とし込み、予算を確保して推進していることも明らかになっています。
しかしながら、実際には既存ビジネスを変革することに消極的な経営陣が少なくないのが現状です。また、DXを単なるデジタル化と捉えているなど、経営層が正しく理解していないケースでは、抜本的な変革ができず、成果を生み出せないということが起きています。
こうした現状を打開するには、経営層がDXの意義について深く理解するとともに、DXを経営戦略として位置づけ、自ら旗を振る姿勢が求められるといえます。
課題2:ITリテラシー不足
社内にIT人材がいないといった理由から、システムについてはベンダー任せにしてきた企業が少なくありません。その結果、社内にノウハウが蓄積されず、老朽化したレガシーシステムを使い続けているケースが問題視されています。レガシーシステムは保守・運用面でのリスクを抱えている上、データ連携ができない、拡張性がないなど、新しいデジタル技術を柔軟に組み込んでいく際の足かせになってしまいます。
また、これまでアナログで行うのが当たり前だった業務においてもデジタル化を実現するツールが次々に提供されている中で、こうした情報を知らないがゆえに遅れをとっているケースが意外に多く見られます。デジタル競争が激しくなっている今、この状態を放置していると、生産性が上がらず競争力を失うという意味でもビジネス上のリスクを抱えることになります。
この現状を乗り越えるには、DXのノウハウを有する社外の人材をうまく活用するという方法があります。また、他社のDX事例を参考にするなどして、情報収集に努めることも大切です。
課題3:DX推進の人材不足
DXを推進するには、ITスキルがあればよいというわけではありません。最新のデジタル技術に関する知見にくわえ、自社に必要なものを見極め、事業・組織の変革に活かすビジネスデザインのスキルも必要となります。しかし、実際には社内でDXを推進できる人材を確保できない、あるいは育成が難しいというのが現状でしょう。
この問題を解消するうえでも、アウトソーシングを含めた外部人材の活用は有効な手段です。プロジェクトや業務単位で専門スキルを持つ人材を活用することもできるうえ、教育コストの削減につながるというメリットもあります。
DX推進ガイドラインとは
DX推進ガイドラインとは、DXを実現していく上で必要なアプローチについて経済産業省がまとめたものです。大きく「経営のあり方、仕組み」と「ITシステムの構築」の2項目から構成されています。ここでは、重要となるポイントに絞って紹介します。
DX推進のための経営のあり方・仕組み
DXを推進する上での経営のあり方・仕組みについては、次の5つの項目が挙げられています。
1)経営戦略・ビジョンの提示
2)経営トップのコミットメント
3)DX推進のための体制整備
4)投資等の意思決定
5)スピーディな変化への対応力
これらの項目では、ITシステム構築の前段となる、DXを推進するための土台づくりを経営視点から整理しています。失敗ケースには、「戦略のない技術起点のPoC(新しい技術や手法の検証)」や「ビジョンがない状態で部下に『AIを使って何かやれ』と丸投げ」といったことが挙げられています。
DXの基盤となるITシステムの構築
ITシステムの構築では、「体制・仕組み」と「実行プロセス」の大きく2つに分けて、ポイントをまとめています。
体制・仕組み
体制・仕組みでは、次の3つの項目が必要とされています。
1)全社的な IT システムの構築のための体制
2)全社的な IT システムの構築に向けたガバナンス
3)事業部門のオーナーシップと要件定義能力
先行事例として挙げられているのは、経営層と各部門からなるチームを編成し、トップダウンにより変革を進めるというもの。一方、失敗ケースには、「付き合いのあるベンダーの提案を鵜呑みにしてしまう、丸投げしてしまう」「情報システム部門任せで、事業部門がオーナーシップを持たない」などの例があります。
実行プロセス
実行プロセスでは、既存のIT資産を把握した上で、移行に向けたプランニング、スピーディな対応が求められます。
1)IT 資産の分析・評価
2)IT 資産の仕分けとプランニング
3)刷新後の IT システム:変化への追従力
なくしても問題のないITシステムを洗い出し廃棄すること、業務の簡略化・標準化により再レガシー化を回避するといった取り組みが先行事例として挙げられています。
失敗ケースでは、「明確な目標設定のないままITシステムを刷新し、DXにつながらない」といった例が紹介されています。ITシステムを構築することが目的ではなく、ビジネスがうまくいったのかという観点から評価すべきことも指摘されています。
DX推進指標とは
DX推進指標とは、企業が自社の現状を簡易的に自己診断できるよう、経済産業省が評価基準をまとめたものです。大きくは、次の2つの項目に分けられています。
- DX推進のための経営のあり方、仕組みに関する指標
- DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築に関する指標
さらに、9つのキークエスチョンとサブクエスチョンが設定され、定性指標・定量指標から自社のDXに関する成熟レベルを認識できるものになっています。
DX推進指標のポイントは、経営層と各部門とが議論した上で回答するという点です。経営者が自社の現状をしっかり把握し、部下任せや情報システム部門に丸投げするといった状態を避けるよう示唆しています。
経済産業省の「DX 推進指標」とそのガイダンスに詳細が記載されているので、チェックしてみるとよいでしょう。
DXを推進するための5ステップ
ここからは、DXの具体的な進め方について5ステップに分けて説明していきます。
ステップ1:経営ビジョン・戦略の策定
まずは経営層のコミットメントを得たうえで、経営ビジョンと戦略を明確にします。ポイントは以下の2点です。
- デジタル技術を活用して、どの事業分野でどのような価値を生み出すのか
- ビジネスモデルをどのように変えるのか
DXが目指すのは、単にデジタル化によって業務効率を高めることではありません。顧客にとっての価値創出および市場の変化に迅速に対応できる仕組みをどのように作るのかという観点が必要です。
とくに、「スピード化」「リアルタイム性」「共有化」「効率化」は、今後のビジネスで重要となる要素です。この点を踏まえて、ビジョン・戦略を明らかにしていくことが重要です。
ステップ2:体制構築
DXを実現するための体制を構築します。ポイントとなるのは次の3つです。
- 事業・組織の変革に対し、積極的に挑戦していく姿勢を組織の共通認識とするには、どのような取り組みが必要か
- DXの具現化を推進・サポートするための組織体制やチーム編成をどのようにするか
- DX推進に必要な人材をどのように確保するか
DXを推進するには、投資判断を含めた意思決定が迅速に行われる体制づくりが求められます。そのため、経営層直轄のプロジェクトとするなど、スピード感をもって実行できる体制が望ましいといえます。
また、トライ&エラーにおける人事評価の仕組みも視野に入れておく必要があるでしょう。人材確保においては、専門スキルを有する外部人材へのアウトソーシングを検討するのも一案です。
ステップ3:IT資産の現状を分析
自社のシステムやIT資産の現状を分析します。以下の観点から評価するとよいでしょう。
- デジタル技術やデータを活用したビジネスモデルの転換が可能なシステム環境にあるか
- 組織横断でデータを活用できるシステム構成か
- 新しいデジタル技術との連携性や拡張性はどうか
- 業務効率化や生産性向上につながっていないシステムは何か
- 保守・運用において、コストや技術面でリスクとなっているシステムは何か
これらを判断するには、システムの利用状況と効果、リスクを洗い出す必要があります。たとえば、売上にほとんど貢献していない機能に大きなコストが発生している場合には、廃棄の判断が必要でしょう。
現状をしっかり把握し、顧客への価値創出や収益性に貢献していないものは、徹底的に見直す必要があります。
ステップ4:システム・ツールの選定
現状を把握したら、次いで自社のビジョン・戦略を実現するための新たなシステム・ツールの選定を行いましょう。検討する際のポイントとして、以下のものが挙げられます。
- データをリアルタイムで使え、かつ使用しやすい形式になっているか
- スピード化を実現できるか
- 変化に迅速に対応できるシステム間の連携性や拡張性があるか
- データを組織横断で共有・活用できるか
- 自社のバリューチェーンにおいて競争力を高める要素になるか
- 導入コスト・ランニングコストにおいて、収益性を圧迫しないか
- セキュリティのリスクはないか
現在は、初期費用がほとんど発生しないサブスクリプションのSaaS(クラウド上のアプリケーションやサービス)が多数提供されているため、無駄を徹底的に省いたデジタル化が可能になっています。
ただし、これらのシステム・ツールは多岐にわたり、ベンダーによって機能・サポート・費用などにおいて大きな幅があります。自社の課題・ニーズに合致したものを選定することは、DXの成功を握る鍵になります。
ステップ5:業務の移行
システム・ツールを刷新したら、業務の移行に取り掛かります。この段階の留意点は、次の通りです。
- 新たな業務プロセスにおける現場への周知と教育をどのように行うか
- 成果の検証と改善のプロセスをどう構築するか
変革における現場の混乱を防ぐと同時に、DXによる成果の検証と改善を繰り返しながら、常に変化に対応できる仕組みを作ることが重要になります。
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